良い油と悪い油
三大栄養素の一つとして知られる「脂質」。
重要なエネルギー源になるだけでなく、細胞膜や核膜を構成するなど、様々な働きをしています。
とりすぎた場合は肥満などによる生活習慣病のリスクを高めることも知られています。
しかし、近年になって脂質ほど注目され、価値を見出された栄養素はないと言っても過言ではありません。
まだまだ多くの人に誤解されている脂質(油脂)についてご紹介します。

身体に悪い油、良い油
悪い油とは、人工的に作られた油のトランス脂肪酸と酸化した油です。
体内脂肪の細胞膜の中に入り込んで細胞の働きを狂わせてしまうトランス脂肪酸は、近年がんや悪性リンパ腫の出現を引き起こすことが判明し、
日本以外の様々な国で使用が禁止されているのは有名な話です。
そして、どんなに良い油であっても酸化してしまったら話になりません。
酸化した油、「酸化油」が最大の敵で、これを摂ってしまうと活性酸素を口にしているのと同じなので、害があるのは当然です。
植物性油脂に水素添加や高温処理をすることで生成される油脂。
マーガリン、ショートニングやそれらを用いた菓子類や揚げ物などに含まれる。 LDL(悪玉)コレステロールを増やし、HDL(善玉)コレステロールを減らす働きがある。
脂質は大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類されています。
身体に良い油といわれる「不飽和脂肪酸」。オメガ3系、オメガ6系脂肪酸等がありますが、特にオメガ3系は「良い油」として挙げられます。
オメガ3とは?

不飽和脂肪酸のひとつ。
オメガ3系脂肪酸には、血液中のLDLコレステロールを上げずに、中性脂肪を下げる作用があり、血圧を下げる効果もあります。
このような働きがあることから、オメガ3系脂肪酸は"健康に良い油"と言われています。
オメガ3系脂肪酸は植物や魚に多く含まれ、次のような種類があります。
イワシ、サバ、サンマといった青魚に多く含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」「DHA(ドコサヘキサエン酸)」と、亜麻仁油やクルミなどに含まれる「α-リノレン酸」があります。
EPA(エイコサペンタエン酸)
魚介類やのりなどに含まれる油状の液体。血小板の凝集を抑制したり血液中の中性脂肪を減少させて生活習慣病を予防するほか、
アレルギー症状やがんの予防、炎症性疾患の改善にも有効とされる。
働き
・血液の凝固を抑え血栓を予防・血液中の中性脂肪を低下させ、動脈硬化や高血圧症などを予防・悪玉コレステロールを減らす
多く含まれる食材
・イワシ、マグロ、サバ、ブリ、サンマ等
DHA(ドコサヘキサエン酸)
EPA同様不飽和脂肪酸の一種であり、必須脂肪酸。主にイワシ、サバなどの青魚に多く含まれ、動脈硬化や血液凝固を防ぐ効果を持つ。
また脳や神経組織の発育に重要な役割を持つ。
働き
・高脂血症、高血圧などの予防・脳の働きを正常に保つ
多く含まれる食材
・イワシ、マグロ、サバ、ブリ、サンマ 等
αーリノレン酸
亜麻仁油・シソ油・エゴマ油などに含まれる必須脂肪酸。
体内でEPAやDHAに変換され、心疾患やアレルギーを予防する効果を持つ。酸化しやすい。
働き
・体内でEPA・DHAを合成・血中の中性脂肪を減らす・血圧値を下げる・アレルギー疾患、高血圧、がん、心臓血管系疾患などを予防する
多く含まれる食材
・亜麻仁油・シソ油・エゴマ油・クルミ 等
オメガ6とは?
不飽和脂肪酸のひとつ。
オメガ6系脂肪酸は、代表的な脂肪酸としてはリノール酸があり、リノール酸は、血中のコレステロール濃度を下げると言われています。
植物由来の油では、コーン油、大豆油など、身近な油の主成分でもあります。
体にとって必要な物ですが、オメガ3というブレーキの役割があって、健康を維持する事ができます。
厚生労働省が推奨する摂取量の割合としては、「1対4(オメガ3/オメガ6)」としていますが、
オメガ6系は菓子、パン、マヨネーズ、カップ麺、総菜など加工食品やファストフードに含まれているため、現代人の多くはでオメガ6系を過剰摂取しています。
オメガ6系に含まれるリノール酸を過剰摂取すると、炎症や酸化、様々ながん、心筋梗塞、脳梗塞、喘息、アトピー性皮膚炎、
花粉症などのアレルギー疾患などを引き起こすことが研究で解っています。
オメガ6系の摂取量を減らし、取るべき油(オメガ3系)とそのバランスを考える事が健康の維持に繋がることでしょう。
リノール酸
コーン油、大豆油など多くの植物油に含まれるn-6系の多価不飽和脂肪酸。
働き
・必須脂肪酸で血中のコレステロール値や血圧を下げる効果を持つ
・摂りすぎると免疫細胞が働きにくくなりアレルギー症状を引き起こす可能性がある
多く含まれる食材
・コーン油・大豆油・ベニバナ油・綿実油 等

余談
意外と知らないオリーブオイルの真実
オリーブオイルはオメガ9系に該当する油ですが、酸化が早いという欠点がある油のため、購入後一週間以内に使い切るようにしましょう。
また、酸化してしまう加熱料理には使わない事をお勧めします。
オリーブオイルは、種ではなく実からオイルを抽出しているため、実に含まれる天然の葉緑素であるクロロフィルに光が当たると反応して劣化(酸化)してしまうのです。 そのため、オリーブオイルを買う際には、遮光されている瓶で小さい物を選び、なるべく早めに使い切るようにしてください。